経済史

本当に日本は貧しくなったのか──日米の一人あたりGDP3倍差を考える

1930年代と2025年現在の日本とアメリカの一人あたりGDP差はほぼ同じ約3倍。しかし生活水準の印象はまったく違う。その理由を列強比較と社会構造から読み解く。
倫理・思想

サルトルの実存主義──国家と権威をどう読むか

サルトルの実存主義は、国家を“主体”として扱う思考をどのように読み替えるのか。国家の権威化や後付けの物語を批判し、自由と責任の視点から国家との関係を問い直す。
倫理・思想

社会主義革命の父レーニンは社会主義者を敵視していた?

レーニンは一般に、社会主義革命を成功させた人物として語られる。十月革命、ソビエト政権、生産手段の国有化──こうしたイメージが重なると、彼が社会主義を推し進めた指導者であることは疑いようがない。 だが歴史の細部をたどると、もっとも激しくレーニ...
歴史・文明

小説と物語──近代ヨーロッパの線引きと世界の受け止め方

小説の定義や物語との違いはどこにあるのか。近代ヨーロッパが作った「novel」という概念を軸に、源氏物語や千夜一夜物語など世界の物語との比較を通して、小説というジャンルの本質を探る。
倫理・思想

民主主義という名の宗教

宗教はかつて、政治の正統性を支え、権力を隅々まで行き渡らせる仕組みだった。日本の神社やヨーロッパの教会は、信仰であると同時に統治のネットワークでもあったのである。近代化の過程で「政教分離」が進み、宗教は政治から切り離された。代わって登場した...
戦争と社会の構造

宣戦布告という道義──正義の演出か、それとも最低限のルールか

戦争には最低限のルールが必要だと人は考えてきた。 その象徴が「宣戦布告」である。外交が尽きたことを示し、相手に戦うか降伏するかの選択を与える――そう語られてきた。だが近代戦の多くは奇襲で始まり、布告は無視されることも珍しくなかった。1907...
倫理・思想

死ぬのはグローバリズムか、ナショナリズムか?熱狂は崩壊の兆しか、回帰の予兆か

巷では反グローバリズム、ナショナリズム回帰がしきりに取り沙汰されている。 自由貿易の揺り戻し、移民政策への反発、国境やアイデンティティを守ろうとする声――どれも今の世界を象徴する動きだ。 それは秩序を取り戻すための正しい反応なのか。それとも...
比較人類学・文明論

環境決定論を超えて──人類の未来へ

『銃・病原菌・鉄』は、人類史における文明の格差を「人種の優劣」ではなく「環境の差」で説明した。その視点は、世界を捉える私たちの考え方を大きく変えた。だが同時に、この本だけでは語りきれない部分もある。 近代以降の歴史を決めたのは、環境だけでは...
比較人類学・文明論

銃や鉄より強かった病原菌

ヨーロッパ人が新大陸を征服できた最大の理由は、銃でも鉄でもなかった。決定的だったのは、彼らが無意識に持ち込んだ「病原菌」だった。 天然痘やインフルエンザなどの感染症は、長い時間をかけて家畜と暮らしてきたユーラシアの人々に免疫を与えていた。し...
比較人類学・文明論

産業革命を先行させたヨーロッパ、出遅れたアジア

農業と家畜という初期条件が文明の格差をつくったのは確かだ。だが同じユーラシア大陸に属しながら、なぜ近代においてヨーロッパが産業革命を先行させ、中国や日本は後れを取ったのか。この問いは、単なる資源や地理の差だけでは説明できない。 ヨーロッパは...
比較人類学・文明論

農業と家畜がつくった力の差

文明の発展を決めたのは、兵器や政治制度よりもずっと根源的なもの それは農業と家畜だった。 肥沃な三日月地帯で小麦や大麦を育てられた地域と、根菜やトウモロコシに依存した地域とでは、人口規模も社会の組織力も大きく異なっていった。さらに、馬や牛、...
比較人類学・文明論

なぜ文明に格差が生まれたのか

なぜある文明は他者を征服し、ある文明は支配される側に回ったのか。 人類の歴史を貫くこの問いに対し、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』は、人種や民族の能力差ではなく「環境と地理」という要因から答えを導いた。 本書は、私にとって考え方を...
倫理・思想

制度は手段か信仰か──夫婦別姓が問いかける目的なきルール

制度とは、社会の課題に対して合理的な解決を与えるために設計される「仕組み」のはずだ。 しかし時として、制度はその目的を見失い、ただ「守ること自体」が目的となる。 そうなると制度は、もはや制度ではない。信仰である。 「制度の目的喪失」という観...
倫理・思想

自国第一主義 ──日本人ファーストとアメリカ・ファーストの落とし穴

「日本人の税金は日本人のために使うべきだ」 「アメリカはアメリカ人の雇用を守れ」 一見もっともらしく聞こえるこのスローガンは、トランプの「アメリカ・ファースト」や日本で広がる「日本人ファースト」に象徴されるように、近年の内向きな社会の空気を...
倫理・思想

昨今の日本におけるクルド人問題に思うこと

最近、埼玉に住むクルド人コミュニティに対する報道が目立っている。「外国人が増えて治安が悪くなった」とする地域住民の声が取り上げられ、SNS上でも「クルド人は危ない」「不良外国人は排除」といった言説が散見されるようになった。 だが、これらの声...
人類の起源と考古学

なぜ農耕は同時多発したのか──人類の進化と『偶然』の謎

人類の歴史は、実に30万年近くが狩猟採集の暮らしに費やされてきた。ところが今からわずか1万年前、人類は突如として「農耕」という新たな生存戦略を選び始める。しかもそれは、メソポタミアだけではなかった。中国、アメリカ大陸、アフリカ……地球上のま...
歴史・文明

なぜ日本は苗字で人を呼ぶ国になったのか──制度が作った呼称文化と世界の比較

私たちは日常的に、職場でも学校でも人を「苗字」で呼ぶことに違和感を感じない。けれど、時代劇では「〇〇殿」「〇〇さま」と下の名前で呼ぶ場面が目立つ。実は日本も、かつては名前呼びが当たり前だった国だった。なぜ苗字がこれほど一般化したのか? それ...
倫理・思想

母系的価値観とフェミニズム──“もうひとつの構造”が語る社会の可能性

「母系社会」と聞くと、女性が主導する平等で平和な社会を思い浮かべる人も多いかもしれない。実際、フェミニズムの文脈では、かつて存在したとされる“女性が中心の社会”が理想として語られることがある。しかし、母系社会とは本当に女性が支配する社会だっ...
比較人類学・文明論

米と小麦が世界を分けた──農業と民主主義の関係

小麦と米の違いが、なぜ社会制度や人口構造の差を生んだのか? 農業の労働特性と収量効率から、中央集権と民主主義の起源を読み解く。 ジャレド・ダイヤモンドや梅棹忠夫とは異なる筆者独自の視点で迫る文明論。
比較人類学・文明論

言語はなぜ崩れるのか?──まとめ

言葉は、なぜ崩れるのか──この問いをめぐって、私たちは音と文字のズレ、文法の揺れ、社会と権力の関係、そしてマイノリティの声にまで目を向けてきた。 それは単なる“言語の変化”ではなく、「人間が社会をどうつくり、どう変わってきたか」の記録でもあ...
比較人類学・文明論

言葉は誰のものでもある──共通語とマイノリティのせめぎあい

「正しい日本語を使いましょう」「標準語で話しなさい」。こうした言葉の裏には、無意識のうちにある“言語のヒエラルキー”が潜んでいる。だが本来、言語とは誰かの所有物ではなく、人々のあいだに生まれ、受け継がれ、変化していく共有財のようなものだった...
比較人類学・文明論

正しさは誰が決める?──言語規範と“誤用”という幻想

なぜ「誤用」と呼ばれるのか? 言語にはしばしば「正しい使い方」と「間違った使い方」が存在するとされる。たとえば―― 「ら」抜き言葉(見れる・食べれる)は誤り? 「的を得る」は本来「射る」だった? 「全然大丈夫」は“間違った日本語”? これら...
比較人類学・文明論

言語は崩れるほうが強い?──不規則性が生む柔軟性と多様性

言語は変化する──それはもはや前提として受け入れられている。だが、その変化は必ずしも“崩壊”や“劣化”を意味するのだろうか? たとえば、文法の例外、不規則な動詞、意味の揺れ。一見すると非効率で混乱の元に思えるが、実はそうした“不規則さ”こそ...
比較人類学・文明論

なぜ発音とスペルはズレていくのか?──英語とフランス語の“不一致”を解剖する

英語を学ぶ人なら誰しも一度はこう思ったことがあるはずだ。 「なぜ“knight”が“ナイト”と読むんだよ!」「“colonel”が“カーネル”?いや無理あるでしょ……」 このように、スペルと発音のズレは英語学習者にとって最大の障壁のひとつだ...
比較人類学・文明論

自然言語はなぜ崩れるのか?

私たちが日々使っている自然言語──日本語や英語をはじめとするそれらは、はじめから「秩序ある体系」として設計されたわけではない。時代とともに崩れ、混ざり、ねじれながら変化し、それでも“使われ続けたもの”だけが生き残ってきた。 本シリーズでは、...
歴史・文明

正統性は作られる──南北朝と天皇神話のねじれ

歴史には、誰かが作ったフィクションが、やがて誰も疑えない「真実」になる瞬間がある。日本の天皇制もまた、その典型だった。南北朝の正統性のねじれから、明治政府による自己正当化、そして昭和の狂信へ──。「正統性とは何か?」という問いを通して、歴史...
倫理・思想

偶然と奇跡の境界線を考える

数年前、当時2歳の娘がレゴブロックで遊んでいた。 カラフルなブロックを30個ほど、無心に組み合わせては笑い、また壊していた。大人の私からすれば何を作っているのかはわからない。けれど、その作品にはなんともいえない魅力があり、それは大人の発想で...
歴史・文明

書字方向の文化史──文字はなぜ右から左、左から右になったのか?

古い日本語の看板や本で見かける「右から左に書かれた横書き」。なぜあんなふうに書かれていたのか、不思議に思ったことはないだろうか。 文字の進む方向は、単なる習慣ではなく、刻む道具や書く動作の都合から生まれ、時代とともに変化してきたものだ。本記...
戦争と社会の構造

戦争はなぜ終われなかったのか──「終わらせる」という選択と、私たちの時代

本シリーズでは、第一次・第二次世界大戦を中心に、戦争がなぜ長期化し、終戦が困難だったのかを、 心理・制度・記憶・体制・感情・責任構造といった多層的視点から見てきました。 最終回ではこれらを総合し、「戦争を終わらせる」とは何かという問いを、歴史・現在・人間社会の普遍的構造として総括的に考察します。
戦争と社会の構造

終戦のあとに戦いが始まる──責任と記憶をめぐる“戦争の後始末”

戦争の終結は始まりにすぎない。戦犯裁判、記憶の共有、占領政策、記念碑、教育を通して「平和」はどのように制度化されるのか──戦争の“後始末”が現代社会に与えた影響を探る。